会社組織の当たり前を物理学で考えてみる
最近聴いていたPodcastで、物理学者&楽天の執行役員でもある北川拓也さんが面白い話をしていました。
第一原理主義
物理学(自然科学全般)の世界では「第一原理主義」(First Principles Thinking)という考え方がある。
教科書的な定義だと、ほかのものから推論できない命題(基本的前提)のこと。つまり、ある複雑な問題に関して、絶対に確実だとわかっていることがそれにあたる。
「全体は部分の合計」という考え方で、分解することで全て理解できる、というものらしい。
例えば、素粒子⇒原子⇒分子⇒細胞⇒生物と構成されていて、「生物」の研究で疑問があったら、その下層要素である「細胞」の法則に立ち戻って明らかにすれば、「生物」についても疑問解決できるね!ということ(だと、私は理解した・・・)
イーロン・マスクがロケットを作ろうと考えた時も、この原理を使って、ロケットの構造や打ち上げ費用削減といった課題を分解していったようで、「第一原理主義」でGoogle検索すると、たくさん記事が出てくる。
英語をマスターしようとする大人に「中学生からやり直せ!」といった言葉が妙に響いてしまうのは、この原理のせいなのかもしれない。
でも、「分解することで全て理解できる」なんてことがあるのだろうか。それって人間の傲慢では?
More is Different
第一原理主義が人間の傲慢か、なんてことは物理学にとっては分野外れなテーマかもしれないが、「最も創造性に富んだ物理学者」が1972年に名言を生んだ。
アメリカのフィリップ・アンダーソンがサイエンス誌に発表した「More is Different」という論文である。
従来支配的だった第一原理主義への反省・反論をまとめたもので、タイトルの通り、構成要素がたくさん集まると、予想もつかないことが起こる、ということを述べている。
つまり、「全体は部分の合計ではなくて、構成要素ごとに科学が必要」らしい。
なんだか物理学者ぽくない物理学者だと思う(良い意味で)
従来のビジネス理論
従来のビジネス理論は、「誰がやっても同じ結果になる数式」を求めていた。
理論である限り、「時と場合によります」なんてことは言えないから。
でも、「誰がやっても変わらない」と定義することは、人間や組織の存在を軽視しているのでは?
More is Differentなビジネス理論
素粒子⇒原子⇒分子⇒細胞⇒生物(人間)⇒会社(法人)⇒社会
第一原理主義に基づくと、生物(人間)が集まって形成される会社(法人)において、何か問題が起こったら、それは人間一人一人を分析すれば解決できる、ということになる。
上記はかなり極端な決めつけだが、単純に工数を増やせば売上が上がる、と考える人にとってはそんなに極論ではないかもしれない。
ただ、例えば同じ20人規模の会社を作るとしても、どんな20人を集めるかによって異なる会社が出来上がるように、会社の構成要素が人間である限り、そんなに簡単な問題ではない。
人数が増えれば増えるほど、組織は変わる(もちろん減っても変わる)。
そう考えると、会社はMore is Differentの典型なのかもしれないし、More is Differentであるべきだと思う。
もちろん第一原理主義的な「なぜ」を突き詰めて、分解して考えていく思考も大切ではあるが、その構造理解を複層的に行うことやミクロを積み重ねてもマクロにならないこともあることを前提にしたビジネス理論も今後、登場&必要とされるのでは?と思う。
終わり
おまけ
P.W.Anderson ”More is Different"全文